長谷川雄一の夢日記です。
モンゴルへ
スペインから日帰りでモンゴルへ、友人らと自転車で移動していた。
空は水色で、乾いた岩肌の山々が遠くに見えた。
途中、Y字の交差点があり、どちらに行けばよいか分からなくなってしまった。
信号機には「里中西」と書かれており
道沿いには里中小学校という白い建物があったので
僕たちは小学校に入り、誰かにモンゴルへの行き方を聞くことにした。
学校の廊下は灰色で、静かにまっすぐ続いていた。
廊下の左側は、磨りガラスの窓があり、その向こう側の教室はひっそり静まり返っていた。
廊下を突き当たりまで行くと、低学年用の児童図書館があり
暗い中で子どもたちがガヤガヤと遊んでいる様子だった。
児童図書館の中は暗幕で窓が塞がれており
湿った暗幕にはおびただしい量のホタルイカがくっついて
ぼんやりと儚い光を放っていた。
子どもたちは好き好きに走り回り、相変わらず賑やかである。
部屋の中心には、昔、姉の担任だった佐竹先生が腰掛けてこちらを見ていた。
友人が佐竹先生にモンゴルへの行き方を訊いてみた所
図書室の本で、自分で調べよとのことだった。
平置きにされた沢山の書物は、すべてイカに関するものばかりで
様々なタッチで描かれたイカのイラストが目についた。
特に、シャガールが描いたと思われる緑色のイカの絵が奇麗だった。
友人は当然のように、モンゴイカについて書かれているものを探していた。
ベンチ
公園の中央には草木を植えた小さな区画があったのだが
植木屋さんが誤って草木を切りすぎてしまい
あまりにも風通しが良くなりすぎて
公園のベンチは動物のように飛び跳ねて逃げて行ってしまった。
僕と友人の岡沢じゅんくんは逃げ出したベンチを捕まえて
元の所に返さなければならなかった。
プラスチック製の白いベンチはうさぎのようにすばしこく
とても捕まえられなかったので
真鍮制の重い二人掛けのベンチをなんとか捕まえて公園に持って来た。
しかしテーブルは1人用の小さなプラスチック製のものばかりだったため
二人掛けのベンチはどうしても似合わず
その上捕まえたベンチが既に息絶えて、冷たく硬直しており
しばらく二人でベンチに腰掛けて話をしていたが
座り心地が良くないとの判断で、公園に埋葬することにした。
公園の中央の草木の生えた区画に穴を掘り
ゆっくりと二人掛けのベンチを降ろして、上から黒い土をかけた。
じゅんくんが小さな白い花を置いた。
冷え男
ボロボロに錆び付いたスケルトンバスの中はヒーターを幾つもつけて
蒸し風呂のように暑くなっている。
厚着をしてまん丸になった人間たちはピンク色の耳当てをつけて
ストーブに当たり、「冷え男」がやってくるのを今か今かと待ちわびていた。
冷え男はバスが駐車してある路肩の奥に設けられたプレハブで
16度に設定したクーラーの中、かき氷を食べながら
素っ裸になって出番を待っている。
冷え男はスタートの合図とともに放たれ、バスの後ろのガラスを破り
真ん中の狭い通路を駆け抜け、バスの昇降口から出て行くのだが
その時に冷え男に手をかざすと、何となく涼しいというのが
今回のイベントの醍醐味である。
ところがバスに入って来たのは、酷く酔っぱらってニヤニヤ笑っている
キャプテンハーロックのTシャツを着たアニメオタクと思しき外国人で
片手に小さなナイフを握っていたので、車内は大パニックとなり
厚着した人間たちはそのまん丸い体のせいで身動きが取れず
ただ泣き叫ぶことしか出来なかった。
寝袋
歯医者の診察室は青白く清潔だった。
金属の皿の上には金属の器具が置かれ、尖った先端からカイコの糸の様なものを垂らしていた。
いくつかの診察台にはすべて、くすんだ色の寝袋に包まれたバックパッカーたちが横たわり
微動だにせず、不潔に絡まったドレッドヘアーを少しだけ見せて、旅の疲れを癒している。
すると寝袋は、乾いた落ち葉を踏む様な音を鳴らし、みるみる乾燥して
大きなさなぎになってしまった。
バックパッカーたちはさなぎの中でジュース状になって世界中の夢をみている様子だった。
猿の頭
以前友人にあげた唐辛子の種が発芽したとのことで
唐辛子の苗を実家に持って来てくれた。
それは、ビニールの買い物袋にどっさり土が入っており
貧弱な枯れ木の枝の様なものが突き刺さっていた。
パンパンに土の詰まった買い物袋は安定が悪く
何処にしまおうとしても倒れてしまい
置き場所に困ったので、余分な土を取り除こうとしたところ
中から猿とも人とも分かりかねる様な頭部がゴロリと出てきてしまった。
猿にしてはしわが無く、ツルンとした桃色だが
人にしては不自然な程に小さく気味が悪い。
友人にこの頭部について訊こうと思い二階へ上がると
彼は三面鏡の中に入り、蓋を閉じて大便をしてしまっていた。
どうやらトイレと間違えてしまったらしいのだが
隣の部屋の鏡台にも小便をした形跡が見られた。
僕は再び階下へ戻り、ティッシュか雑巾が無いかと台所へ行くと
母が先程の土の詰まったビニール袋を触っていた。
母は頭部を土から引っ張り出したかと思うと
流し台でざっと土を洗い流し、まな板の上に載せ
流しの下の扉から鋭く研がれた出刃包丁を取り出した。
レコーディング機材
昼下がりの池下駅の歩道で機材を広げレコーディングをしていた。
木琴や鉄琴を録音する際、音の響きが良くないと感じたので
バチの先っぽの丸いやつを買いに行くことになった。
バチの先っぽの丸いやつは隣町の大型デパートにしか売っていないので
皆でデパート内を散策したが、どこも安全ピンを1本10円で買い取る店ばかりだったため
バチの先っぽの丸いやつを諦めて帰ることにした。
ところがバス停は人がごったがえしており
23時前までバスは来ないとのことで、皆とバスレーンの脇のブロックに腰掛けて
今日一日が無駄に過ぎてしまうことを空しく思っていた。
気づくと、強い雨が降り出した。
僕は高価で水に弱いレコーディング機材を屋外に出しっぱなしだったことを思い出し
愕然としたが、皆と一緒にいる手前不格好にうろたえることができず
「もう一回録音し直さなくちゃならなくなってごめんね」
という様なことを伝えると、皆も僕の心境を汲み取ってくれたのか
両手をあわせてお経を唱え始めた。
どうか機材が無事でありますようにと僅かな可能性を期待して見上げた空では
ジャンボジェット機が着陸に失敗しながら、何度も宙返りを繰り返していた。
僕らに背を向けて大きく輪を描くジャンボジェット機は
そのまま遠くの街に突き刺さりオレンジ色の炎を上げた。
走って近くまで観に行くと、池下駅に墜落していた。
溶けた鉄が次々と降り注ぎ、僕の袖口に落ちた。
生地にしみ込んだ鉄は、熱いできたてのカレーだった。
インキ
手作り雑貨市のような屋外イベントに参加していた。
僕たちは実にリアルな手作りのサイのオブジェに
マレーバクのようなツートンカラーを白ペンキで色付けしていた。
ハケを手にした友人が「インキがない!インキがない!死ぬ!死ぬ!」と
狂ったように騒ぎ始めたので、大急ぎで実家の近所の畑に行き
「白いペンキの缶が実っていないか木々の枝を見て回った。
足下には鮮やかな紫色のソーセージが連なる形で生えていた。
ハンガリーツアー
ハンガリーに訪れたのは何度目か忘れてしまったが
今回初めて友人らと演奏目的でやって来たので楽しい気分だった。
会場近くの小さな店でタバコを買おうと思ったが
どれもこれもバニラ&生姜テイストで選びかねているうちに
自分の後ろに長蛇の列ができており
焦った挙げ句、枯れ木の枝を買ってしまった。
乱暴に扱うとポキポキ折れてどうしようもないので
取り扱いには注意が必要だった。
演奏会場は小学校の体育館の様な所で
自分達より先にハンガリー人のパンクバンドが演奏していた。
僕は久しぶりに洗髪をしていたので
シャンプーを洗い流す為に水道の蛇口を探しているが
ハンガリーでは何処かで誰かが蛇口を使っている間は
他所の蛇口からは水が出ない不便な作りである為
頭を泡だらけにしてパンクバンドを観ているより仕様がなかった。
若いパンクスがマイクを手に環境保護を訴えており
「水を汚すな、シャンプーを水で流すな」と言い始めたので
困ってしまった。
航海
友人らと家の近所を歩いていた。
青空を優雅に大きなエイが泳いでいるのを見て
自分も泳いでエイに近づき触ろうとしたら
毒を持っているかもしれないからやめろといわれた。
車道いっぱいに丸太とロープで組まれたアスレチックの遊具があり
天辺まで登ると道路脇の田畑を初めて見下ろすことができた。
円墳の様なものや大浴場の跡らしきものが点在し
友人曰く、これは地元の卒業生が作った古代遺跡だという。
アスレチックを終え、交差点まで来るとその先は海だった。
家庭用の空気を入れた簡易プールに皆で乗り
日本の最西端という小さな島にたどり着いた。
透き通る海中には色鮮やかな熱帯魚がぎゅうぎゅう詰めになっていた。
もう少し行けば韓国に着けるとのことだったが
友人の一人が明日朝から仕事だからと帰る準備を始めた。
皆プールに乗り込み気がつくと一人僕は小さな島に取り残されていた。
僕は首の周りを覆う形の携帯用枕を浮き輪代わりに首に装着し
韓国に向けて流されて行った。
服飾の授業
進級してクラス替えがあり、友達が殆どいなくなってしまった。
しかし、授業中に話し相手がいないとなると
何となく授業を聴いて先生の言っていることを理解することが
割り合い楽しいことのように感じた。
英語の先生が「たこは丸くてイカは三角、おかっぱ頭の四角人」
と言っていることが手に取るように理解できた。
次の授業は服飾の授業で、知り合いのデザイナーの人の作った服を
皆で持ち寄り、コピーして売り出そうというものだった。
一人ずつ知り合いの作った服を持って校長先生に見せていくのだが
僕の持っている服は、裏表逆で穴だらけで
「こんちくしょう」とプリントされており
クラスメイトたちからそれを校長に見せるのは失礼にあたり
会社をクビになるぞと脅され、強制的に捨てられそうになった。
しかし僕は知り合いの作った服に誇りを持っていたため
躊躇無く校長に提出すると、企画が通ってしまった。
校長室の窓から放たれた金色の竜が猛スピードで空の彼方へ飛んで行き
僕の服を持ってコピー室へ向かって行った。
巨大な竜は、ミミズのように体をくねらせ踊るように飛び
雲の向こうで大王イカと戦っていた。
聞くところによるとコピー室は大気圏外にあり
九州ほどの大きさがあり、先端はロケットのような形で
外面には七福神の様な、めでたいイラストがびっしり描かれているという。
服がコピーされるまでの間、皆で海に行くことになり
バスで向かった先は家の近所のドブ川で、傍らに水槽が設置されており
中には小魚と大きな半透明のクラゲが漂っていた。
「お、今日の主役はクラゲですか」と校長が笑い
テーブルにナイフとフォークと真っ白い皿が並べられ
ハッピを着た漁夫が水槽に漂うクラゲをもりで突いていた。
遊園地
遊園地で女性とデートをしていた。
僕は中学生で、女性は赤色っぽい別珍の塊のような感じだった。
遊園地は実家の居間で、僕たちはアリのように小さくなっていた。
赤い女性が電飾のピカピカ楽しそうな観覧車に乗っているのを見つけ
僕もよじ登ってみるが、途中足を滑らせたら大怪我をしそうだ。
背丈の様々な木製の電柱の天辺をジャンプして渡り、観覧車に近づくと
赤い女性が今度はこれまた電飾の派手なゴンドラに乗って
UFOのようなスピードで辺りを回転しながらランダムに移動し始めた。
これは面白いアトラクションだと思い、僕も近くにあったゴンドラに乗り込むと
そこはアイススケート場のカーリングを予約した人たちの待合室で
随分と退屈なものだった。
1時間待ちの看板の後ろにはジャンボ海水プールがあり
楽しそうな滑り台が空いており、並ばなくてもいい様子だったので
勢いよく滑ってみたものの、滑り台は乾いたマジックテープでできていたため
僕のセーターにくっついてベリベリとゆっくりはがれ落ちながら降下し
出た先では当時の人気バンドのBAKUがヒット曲「ぞうきん」の演奏を始め
マイクを手渡された僕は恥ずかしくなり思わず側にあった階段を駆け上がった。
すると今度はチューブになった滑り台があり、とても楽しそうなのだが
入り口に監視員がいて、僕の腕にはアトラクションの乗り放題券のベルトしかなく
プールに入場できる人とはベルトの色が違うことに気がついた。
こちらを見ている監視員のことが怖くなり後ずさりすると
隣にもあったチューブ状のウォータースライダーに落ちてしまい
物凄いスピードで落下して行くが、僕のすぐ上を一緒になって
嬉しそうな顔をした安田大サーカスのヒロくんが落下してきており
このままでは滑り降りた先で押しつぶされてしまうと思い目を閉じると
滑り台の出口は授業後の中学校の教室で、同級生の男女がおしゃべりをしていた。
僕はプールに入る予定が無かったこともあり、海水パンツなど履いているわけも無く
つまり丸裸だった。
恥ずかしくなった僕は再び側にあった階段を駆け足で上がって行った。
ウンコという俳優
ウンコという芸名で頑張っている俳優さんのことを久しぶりに思い出した。
映画で主役をやったことがあるかどうかは不明だが
無精髭とだらしない長髪を生かし、少し影のある二枚目をよく演じていた。
そのウンコと偶然電車で乗り合わせ、少しお話をしてみたいと思い近づいてみると
急にデジカメを手渡され、窓にとまっている小虫を撮影するよう指示された。
撮ろうと思ったら小虫は逃げてしまい気まずい顔でウンコの顔を見ると
今度はパンフレットのような紙切れの横チョに印刷された小さなロゴマークを指差すので
写真を撮るがやはりぼやけてしまい彼の顔を見る。
ウンコはしらけた顔をしてため息をつき、頬杖をついて遠くの景色を眺め始めた。
ライダーのピンチ
仮面ライダーが目の前で怪人にやられている。
小学生が持っているようなナイロンの桃色の縄跳びで木に縛られ
植物の茎か枝のようなもので太ももを繰り返し打たれている。
このライダーのピンチは、おそらく全国の茶の間で生放送されていると思い
なんだか酷く恥ずかしい気持ちになってきたので
誰かライダーに助太刀するものはいないかと辺りを見回すと
あまりよく知らない仮面のヒーローが遠くの方から颯爽と現れた。
ところが、ライダーのもとにやって来るや、彼は軽くつまずき
ポケットから何やら手のひらサイズの楕円形の装置を落とし
慌ててその機械を拾い上げると揺さぶってみたり耳を当ててみたりして
「うわっ!壊れた!全然動かん!」などと動揺し始めた。
僕もライダーも気まずい雰囲気になってきたが、怪人はおかまいなしに襲いかかって来る。
よく知らない仮面のヒーローは半狂乱で先程の機械を逆手に持ち
怪人の頭部を何度も何度も打据えた。
どうやらその装置は変身したり人間に戻ったりする時に必要らしく
これが壊れてしまった彼はもう一生元に戻れないそうで
完全に冷静さを失っている彼になんとお礼を言ったらよいか分からず
空気は気まずくなるばかりだ。
エアロビ
地下鉄池下駅は深い谷底に位置しており、細い錆び付いた階段で降りていく。
駅の構内では、鉛の手枷足枷をはめられた大勢の男女が
軽快なリズムに合わせてエアロビに夢中である。
自分も受講料を支払った以上、このエアロビに参加しなければならないのだが
ここの生徒の殆どはダイエットや体力作りではなく出会いを目的としているため
新参者の僕は手枷足枷を着けられる間、始終品定めの様な視線を感じ居心地が悪かった。
不自由になった手足でオットセイのように地面を這っていると
交差点を過ぎた暗がりで背後から筋肉質な黒人に羽交い締めにされた。
エアロビのインストラクターの男だった。
物凄い力で胸を揉みしだかれ、僕の乳房はみるみる豊満になってしまった。
夜のプール
地元のスイミングスクールで泳いでおり、プールサイドにあがり時計を見ると
もう夜の12時前だった。
早く帰らないと、夜の室内温水プールは暗く静かで寂しすぎると思い
急いで更衣室に向かうが、その途中に通過する消毒槽はあまりに温かく
その上ここに入っていれば、どんなにおしっこをしても誰にもばれず迷惑がかからないので
もう一生ここで暮らすのも悪くないと考えていた途端に
天井の照明が一気に消え、自分の浸かっている温水がすべて
ここにやって来た者たちがしていったおしっこであるような気がして
耐えられず手探りでおしっこに腰まで浸かり慌てふためいていると
プールサイドの辺りからいよいよ幽霊の白い影が漂いはじめ
僕は目を閉じて耳を塞ぎ温水にしゃがみ込んだ。
呼び出し
商業科の3年生に呼び出されたので、授業を抜け出して廊下を歩いている。
どうせまた何か言いがかりをつけられ殴られるのだ。
呼び出された下駄箱に着くと見たことのある3年生が一人僕に近づいて来て
明日交通事故で死ぬ彼自身の葬式の招待状を受け取り
そのまま中庭を横切り授業に戻ることになった。
校舎の縁の下からは、ひび割れた白塗りの裸の僧侶が這いながら出入りし
小さな子供を次々と地下に運び込んでいる。
その傍らを緊張しつつ通り過ぎ教室に戻ると
教壇に立つ教師は電池切れで、指揮棒のようなものを持ったまま
目を見開き前のめりの体勢でピタリと止まっている。
すると突然乱暴に教室の引き戸が開け放たれ
父親が僕のそばに駆け寄り張り手を浴びせようとして来たので
振り上げられた父の手首を掴み
僕は、受け入れがたい自分の置かれた状況に我慢できず、電池切れの振りをして
その場をやり過ごそうとする大人げない教師の授業を受けるより
ずっと立派な人に会うために授業を抜け出したということを伝えたのだが
それがどこの誰だったのかはすっかり忘れてしまっていた。
地下駐車場
ショッピングセンターの地下駐車場のような場所で
沢山の友人がバーベキューを楽しんでいた。
地下駐車場は吹き抜けになっており
僕は、地上の手すりに両肘を立てて
酔っ払って甲高い声をあげて笑っている皆を見下ろしていた。
すると不意にバーベキューをしている隣のエレベーターが開いたかと思うと
中からゾロゾロと素裸にはんてんの様な物を羽織り
だらしないチョンマゲを結った男達が出てきた。
僕はすぐに、彼らが日本近海で大暴れした海賊「倭寇」であることが分かった。
彼等の正体に気付かず、相変わらず高らかに笑い、調子付いている皆を見て
まずいと思った僕は、口笛を吹き鳴らし、自分なりに考案した独自の身振りで
「WA・KO・U」と暗号を送ったものの全く理解してもらえず
バーベキューセットなどや木炭などを略奪されて、場がしらけてしまう前に
何とかしようと階段を探したが、目の前のキウイ畑の向こうから
何頭もの、目にガラス玉を埋め込んだ鹿の剥製が、一目散に逃げてきて
次々と雄々しい角を突き出して僕に衝突してくるので
反対方向へ走るより他どうしようもなく
実家の玄関に辿り着いてしまった。
チューブ
もう今にもエンジンが止まってしまいそうな原付で
チューブの中のように真ん丸いトンネルを走っている。
ゆっくりフラフラと走っているが、一体何処がが天井で何処が地面なのか分からず
次第にスピードが遅くなり、やがてエンジンが止まると
自分が天井を走っていたことに気付き、地面に転落した。
トンネルは何処かの病棟の清潔な廊下に続いており
いつの間にか看護婦に就職した友人の女性が
患者のカルテのようなものを小脇に抱え颯爽と歩いていた。
背中が大胆に開いたタイプの制服から彼女の背中が丸見えで
肌には赤黒いにきびが散らばっており
よく見ると、老人の干からびた爪のような角質化したものがいくつか突き出していた。
自転車登校
今日は学校で数列のテストがあるのにも拘らず何一つ準備をしていなかったので
早めに学校へ行き教科書に目を通すだけでもしておきたかった。
ところが教科書は8畳間いっぱいに絨毯のように広がったスルメイカだったので
力いっぱいたたんでも酷くかさばってしまい持っていくことができなかった。
教科書を諦めて自転車にまたがったところ車輪に巻きついているのは
タイヤではなくあぶりたての粗挽きウインナーであることに気付いた。
時間が無いので運転をするが、今にもいい音を立ててはじけてしまいそうである。
月の火花
真っすぐに伸びた長い道の両端は広いイチジクの畑で
自転車を停めて僕は友人らとイチジクをほうばった。
イチジク泥棒を監視する白い小屋が畑の中にあり
近づくと2匹のネコがこちらを網戸越しにそっと見張っていた。
再び自転車を走らせ人通りのない広い交差点に着くと
横断歩道の縞模様は塗りたてで、べとついていた。
夜空は軽く波打っており、湿った雲が月に触るたび
月はジュッと音を立てて、濃厚なオレンジ色の火花を散らし
火花は交差点の真ん中の水溜りに落ちて
静かに白い煙を上げた。
煙は理科室のような匂いがした。
報復
小学校のプールの更衣室で同級生に馬乗りになり
激しく肘打ちを食らわせていた。
水泳パンツをはいただけの同級生の体は濡れており
艶々と光って、冷たくて温かかった。
僕が図工の時間に作ったらしい木製の犬が大きすぎて
更衣室のロッカーに入らず、むしゃくしゃしてやっているようだ。
家に帰ると予想通り同級生は2丁のピストルを構え報復にやってきた。
僕は箪笥の裏に隠れたが、箪笥はあまりに不自然に斜めを向いており
すぐに見つかってしまい、銃口がこちらに向けられた。
しかしすぐさま彼の手首をねじり、ピストルを力ずくで奪い
同級生目掛けて何発も何発も撃つと、彼は不恰好に畳に倒れこんだ。
部屋の奥には五月人形が飾りっぱなしであることに気がついた。
ピストルはモデルガンで、撃たれても青あざになる程度だったが
あまりに惨めな彼の後姿を見ているうちに、そっと抱きしめたくなった。
ライブハウス
ライブハウスのような場所で次のバンドが出てくるのを見守っていた。
出てきたのは最近売れ始めているという女性ボーカルのバンドで
アフロヘアで大きなサングラスをかけた色黒の女性シンガーは
パンクロックでさっきまで暴れていた客にとってはあまり面白くなかった。
女性シンガーが掛け声を何度もかけて客をあおり始めると
見た事のある一人の客がステージに上がり、無表情のまま彼女の衣類を剥きはじめ
演奏はピタリとやみ、バックバンドは震え上がり
観客は冷酷に成り行きを見つめ、嫌がる女性は足をばたつかせるが
魚を下ろすように事務的に女性は丸裸にされ
あまり綺麗ではない黒い臀部をライトに照らし出されていた。
ライブハウスの店長は客席の後ろのほうで
1400通も来た迷惑メールを削除するのに夢中の様子で
その途中店長に何度か小声で、削除はもうそこらへんでやめたほうが良いと
キーボードに手を伸ばした僕だったが
彼の手には刃物のようなものがあったので、あまりその作業を邪魔することもできなかった。
怖くなり逃げ出し駐車場へ向かう途中
さっきの客が、今度はバックバンドの男性の髪の毛をつかみ
建物の陰で何やら淫らな行為をを強要している様を目撃したが
知らないフリをしてしまった。
駐車場にはいつものように巨大な黄土色の軟便が
土砂のようにいくつも渦を巻いていた。
しかし巨大な軟便は細長い黒目がついており
キョロキョロと冷酷な視線でこちらを伺うので
イリエワニだとすぐに気がついた僕は上手にワニの攻撃をかわし
車内に飛び込み一安心したものの、友人の女性がのんきな顔で
フラフラとワニのそばを歩いているのを見つけ
大慌てで彼女に駆け寄り事情を説明すると、彼女は
そういうワニみたいなことは自分が一番日々気をつけていることだと
何の根拠も無く偉そうに語るので、僕は彼女を睨みつけ
イリエワニはパンクの人より怖いものだと説明した。
合コン
知らない男の人の部屋で催された合コンのようなものに招待されて行ってみたものの
コタツを囲んでいるのは既に随分と前から付き合っているような熟したカップルばかりで
会話にすら参加することもできず、せめて次回の演奏会のチラシでも渡して帰ろうと思い
隣の部屋に確かあったようなチラシ置き場に移動すると
家の男の母親と思われるパンチパーマの見苦しいおばさんが
風呂上りの全裸で長椅子に寝転び片足をまげて下腹部を露にしていた。
おばさんは僕に観られていることを承知の上で動じる気配すら見せず
僕は吐き気を催したが、どうしてもその七面鳥に似た下腹部に目が行ってしまい
席を外し玄関の方へ向かうと、突然玄関の引き戸が乱暴に開けられ
顔見知りの米屋のおじさんが血相をかえハンドクリームを手渡してきた。
この毒薬を早く何処かに捨てないと警察に捕まってしまうと必死に訴えてくるのだが
これはどう見てもただのニベアであることを何度伝えても聞き入れてくれず
仕方なく裏の竹やぶに捨てに行くことにした。
かなり狼狽した様子で見守る米屋のおじさんが滑稽に思えた。
ラッパのバイク
友人が世界で最も排気量の多いといわれる
超大型のバイクでやってきて
運転してもよいというのでまたがってみたところ
それは全てチューバやトランペット等金管楽器で作られており
ハンドルからライトからおびただしい数のアサガオが
にょきにょきと突き出していた。
エンジンをかけて発進すると沢山のラッパから
物凄い量の排気ガスが噴出し咳き込んだが
停止するとエンジンが爆発して大怪我をするとのことで
排気ガスにまみれて運転しなければならなくなってしまった。
ところが道路は物凄い数の発情した野うさぎでいっぱいで
ちょこまかと動き回り、互いに背後に回りあうウサギたちを
轢いてしまわない様、細心の注意を払いつつ
超大型のバイクはノロノロとふらつきながら
長い真っすぐな道を不恰好に走っていた。
金色の雲
金色に輝く雲の上に、仲間数名とたたずんでいた。
僕達は何か良くないことをしたらしく
雲の上に住む偉い人に呼び出されたのか
或いは、ここに勝手に来てしまった事に罪の意識を感じていた。
偉い人は金色に輝いており、人のような形をしていた気がするが
もしかすると虎のような形をしていたかもしれないし
どのような容姿だったかは思い出せない。
そして僕達は許され、偉い人が用意した船で地上へ帰ることになった。
船は金色に輝く魚の形をしており
うろこは全て金色の鳥の羽で出来ており、とげのように逆立っていた。
空の波打ち際からゆっくりと船は空に浮かび
しかし、ゆっくりと水色の中に沈んでいく様は
まるで船が沈没していくようで奇妙な心持だった。
辺りが全て水色になり、やがて空の底に地上が見えようとしていた。
ウルトラマンセブンの生首
ウルトラマンセブンの生首がオートバイの先についており
本人が首を捜しに来ないうちに少しだけ触ってみると
オレンジ色の目はグミのようなもので出来ており
目尻に軽く爪を立ててみたら、ペロリと綺麗にはがれたので
一口かじってみたが、味は無かった。
そしてセブンの唇は真っ赤なイチゴ味のグミのように見えてきて
辺りを気にしながら、再び爪を立てるとやはり綺麗にむけたので
それを口にあてがい、バイクのミラー越しに自分を見てみると
まるでセブンに似ていなく、そういえばウルトラマンセブンには
真っ赤な唇など無かったことを思い出した。
高架道路
都会は高架道路だらけで、登ったり下りたり忙しかった。
いつも行き来している高架道路に目をやると
いつの間にか工事でとりはらわれてしまっていたのだが
どの車も道路がなくなっていることに気付いてないらしく
魚の群れのように空中を上手に列になって走行している。
僕もそこを通らないと家に帰れないので車の列に従って
道の無い空をそろりと飛んでみた。
ゆらゆらと不安定に揺れながら走っているうちに、息が続かなくなり
車の窓を開け大きく息継ぎをすると、車がガタンと傾き
下を流れている幅の広い川に落下した。
線路
線路が2本横切っており、ひっきりなしに列車が通過した。
僕は大きな重たい皮のかばんを抱えて、列車を上手くかわしながら線路を越えた。
しかし、一息ついて気がつくと、かばんを二本の線路の隙間に置いて来てしまっていた。
かばんのジッパーが開いて、中から犬のような目をした近所の米屋のおじさんが顔を出し
今にも列車の走り回る線路に飛び出してしまいそうだった。
毛むくじゃらの獣人
更衣室のロッカーの上を、天井に頭をぶつけぬよう
四つん這いになって彷徨っていた。
天井からは怪獣のソフトビニール人形が吊るされており
値札が貼られていたが、人の目を盗んで
ポケットに入れてしまいたい衝動に駆られていた。
誰も見ていないか辺りを確認すると
更衣室を毛むくじゃらの獣人がウロウロ歩いており
怖ろしくなり更衣室を飛び出してみると
そこは、老人ホームのロビーのような所で
窓の外ではビルのように建ち並ぶロッカーの谷間で
毛むくじゃらの獣人が暴れまわっていた。
僕は恋人や友人のことが気にかかり
老人ホームの入居者達が避難用に使用するエレベーターを押して
開けっ放しの状態にして彼女らがやってくるのを待った。
エレベーターを使用できない車椅子の老人達で
階段は大渋滞を起こし、老人達は身勝手な僕に罵声を浴びせた。
やがて彼女らがやってくると、エレベーターに乗り屋上へやってきた。
自分が人の迷惑を顧みず、恋人や友達の安全を優先した事は
正しいことだと思い、これからも正しい道を進もうと心に誓った。
地上では逃げ遅れた老人達が次々と踏み潰されており
天井に目をやると、怪獣のソフトビニール人形が吊るされており
値札が貼られていたが、人の目を盗んで
ポケットに入れてしまいたい衝動に駆られていた。
機械の右手
僕の右手は肘から先が機械化されており
その銀色に光がよく反射して綺麗だった。
勿論クラスメイトからは注目の的で気分が良く
それがよく見えるように右手の袖はまくっていた。
機械の右手の親指と人差し指で丸を作り
OKサインの状態にして上下運動を激しく繰り返すと
非常に心地よいモーター音が聴こえることを発見し
クラスメイト達にどんなもんだいと見せびらかしていたが
友人に「すごい手コキ」と指摘され、人前でやるのはもう控えた。
グローブ
Jaajaのライブが開演する直前のステージで
椅子に腰掛け、真っ赤な緞帳が上がるのを待っていた。
会場が暗くなり、一呼吸置いて、ロッキーのテーマソングが流れ始める。
ふと、ギターを握り締める自分の両手に目をやると
いつの間にかボクサーの赤いグローブをはめており
これでは演奏にならないことに気が付き焦って外そうと試みるが
紐は強く結ばれており、とても自力では無理だと思い
後ろで黙っているメンバーに外してもらおうと振り向くと
メンバーも皆同じように両手にボクサーのグローブをはめて
肩にタオルをかけ、両手をぶらりとさせてうつむいていた。
アラブ人
アラブ人に優しくされたが、お礼も言えず別れてしまい
どうにかして再会したいと思った。
小学校の教室や給食室をくまなく探したが
そのアラブ人を見つけることが出来なかった。
いくら小学校を探してもアラブ人を見つけられないイライラで
とうとう僕は手にした銀色の銃を校内で乱射してしまい
罰として一年生からやり直すことになった。
そして、月日はいとも簡単に流れていくのだが
優しいアラブ人の白い歯と黄色いフリースはいつまでも忘れられなかった。
ある日、ランドセルを背負って川沿いの桜並木を眺めながら下校する途中
土手に数え切れないほどのアラブ人が生えているのを発見し
慌てて駆け寄ったものの、皆白い歯を見せて微笑み
清潔な黄色いフリースのようなものを着ており
自分に優しくしてくれたアラブ人が一体どれなのか区別がつかず
ただもう地面にひざまずき、風に揺れるアラブ人の群れを無言で眺めていた。
海岸
四方を高い壁に囲まれ、室内プールのようだが、海だった。
海岸に波が打ち寄せており、僕はくみちゃんと浅瀬を歩いた。
海は汚れていた。
膝上ほどの深さのある辺りに藻に覆われた岩があり
時折天辺が波間から顔を出していた。
くみちゃんが岩に近づき、揺れる藻の隙間をかき分けて
「今、イカの糞を見つけたんだけど、何処かに行った」
と両手両足を濡らして海中を探り始めた。
彼女が興味あることは自分にとっても興味があることであった。
それがたとえイカの糞であっても。
イカの糞がどのようなものか知らないが彼女と一緒に探し続けた。
砂浜では友人がこちらに向かって質問を投げかけていた。
「ブルースのギタリストが着るカクカクの服ってどんな服?」
ブルースの人がカクカクの服を着るというのは初耳だった。
しかし、イカの糞を探すのに手一杯で、適当に
「ああ、袖がカクカクのやつのことね」
と適当なことを言ってお茶を濁していると
海中に黄土色で円柱状の人糞に酷似した物体が漂っているのを見つけ
「ああっイカの糞!」と叫んだが、彼女に
それはブルースのギタリストの糞だと指摘された。
計算機
お客さんのお会計をしようと思ったら計算機が壊れており
液晶部分に訳の分からぬアルファベットがメチャクチャに並んでいた。
しかもボタンを押すたびに計算機がひとまわりずつ大きくなる仕組みで
計算機を抱えて、ボタンをこぶしで叩かなければならなかった。
400円のビールを三杯でいくらになるのかどうしても分からず
お客さんは、計算機に抱きついて半泣きの僕に呆れかえり
今後のお店の経営に不安を抱えつつ
窓の外の夜は色を濃くするばかりだった。
胴体と頭
道路の真ん中に何か落ちていて、救急車がその端を轢いて去っていった。
それはなにやらモゾモゾとうごめいており近づくと
両腕の無い人間の胴体と頭だった。
日が当たり、乾いたアスファルトの上は少し熱くて
かわいそうだと思った。
車道と歩道とを分けるブロックの上に
丁寧に手首と足首から先が並べて置いてあった。
きっと彼は靴も手袋もしていなかったので
車道に飛び出す前にそれらを置いて自殺を図ったのではないか
というのが僕の見解だ。
2007初夢
体格の良い外国人レスラーとコンビを組んだ友人は
ハンチングをかぶり小洒落た黒縁眼鏡をかけて
軽快なサンバのリズムに合わせて自信ありげにうなずきながら
リングに上がるところだった。
対戦相手は、全身毛むくじゃらで髭の長い巨漢の外国人だ。
ゴングが鳴り響き、外国人同士が試合を進めているのだが
レフェリーがカウントを取る度に、友人は辺りを見回し首を傾げたりして
落ち着き無くコーナー周辺をウロウロしている。
どうやら自分がコーナーから離れすぎたせいでカウントを取られたのだと勘違いしているらしい。
再びカウントが入ると、やはり彼はキョロキョロ自信の無い目つきで
レフェリーに軽く会釈して謝っているようだが、レフェリーは無視している。
多分プロレスのルールを全然理解していないであろう彼の事が可哀想になってきた。
その後も眼鏡を磨いたり、時計に目をやる度にレフェリーにいちいち確認をとるので
レフェリーも少々機嫌を悪くしているようだ。
暫くして、外国人レスラーとタッチした友人がリング中央に足を運ぶと
相手は相当ダメージを受けている様子で
入場時とは打って変わって、細身の学生服を着た眼鏡のガリ勉になっている。
これはチャンスだと友人はガリ勉に近づくが、迂闊にも彼は今日に限って
全然サイズの合っていないブカブカのズボンを履いて来てしまった様で
両手でズボンを持ち上げながらの試合運びになってしまったが
教科書ばかりに気をとられている相手の股間に蹴りを見舞うと
ガリ勉はその場にうずくまり、レフェリーがカウントを取り始め
友人は観客席に、これであっているのかというような自信の無い顔をして
少し微笑んで弱々しくガッツポーズを見せたところ
試合終了のゴングが鳴り響き、ガリ勉のか細い手が高々と上げられた。
友人がスリーカウント以内にちゃんと謝らなかったのが原因だった。
死刑
友人の女性が今晩死刑になるとのことで
実家まで別れの挨拶にやってきた。
窓の外では、牛のような模様の犬と猫が寝そべり
奥の竹林では、小屋ほどの大きさのある糞まみれの豚がため息をついていた。
彼女は2歳の時と3歳の時に殺人事件を犯しており
今回3度目の殺人で、あきれた警官が死刑を求刑したらしい。
竹林の奥にはテーブルが置かれ
彼女の両親がにこやかに娘との最後の晩餐を待ちわびていた。
テーブルにはウナギの蒲焼が直接、山のように盛られている。
涙ぐんでいる彼女に対して僕は何かいいことを言おうとして
犬と猫と豚を指差したが、あまりいい例え話が出来ず
お茶を濁した。
すると彼女は、今日の死刑が済んだら
明日の朝、浜松に行かなければならないそうで
車でガソリンスタンドへ向かい、僕も同乗した。
しかし、いつものガソリンスタンドは更地になっており
白いペンキの剥げたブロック塀と幾つかの錆びたドラム缶だけが残っていた。
彼女はドラム缶をずらし、ガソリンスタンドを探していた。
便器
以前から居間の真ん中にトイレがあり、ドアを開けたら
忽然と和式便器は姿を消していた。
きゅうにのっぺりとしてしまった床に目をやると
今まで便器に気をとられて見えていなかった小さな傷や木目に目が行き
新鮮でありながら懐かしいような感じがした。
一方、便器は祖母の寝室に移動していた。
便器の中を覗き込むと、大便とちり紙と汚水でいっぱいだった。
便器を元の場所に戻したいと思ったが、畳張りの寝室に深々と穴が掘られ
そこに汚物が溜まっている仕組みがよく分からず
祖母の帰りを待った。
祖母の寝室はほんのりとかび臭く、ほの暗かった。
古い電気の紐を2度引っぱると、スコッスコッと乾いた音がして
ピキピキいいながら蛍光灯が重い腰を上げるようにして部屋を明るくした。
便器が無くなっていた。
急いで家の裏に回ると以前と何も変わらず、古いトイレがあり
様式の便器が蓋を開けて黙っていた。
居間の真ん中にあった和式便器もまぼろしだった。
懐かしい気持ちはまぼろしだった。
尾崎豊
尾崎豊の死体のコンサートを観に来ていた。
自分自身、尾崎という死体のことをよく知らず
ただ、自分と同世代に、死体になってもファンがいることだけは知っていた。
コンサート会場は学校の講堂のような所で
尾崎の死体が出てくるのを皆静かに待っていた。
僕の後ろの席の赤い服を着た女性は、真っ白い紙袋を提げており
尾崎の死体グッズを沢山所有しているようだった。
見ると、紙袋から人間の頭が蟹のように這い出してきて
ゴトンと地面に落ちた。
彼女の足元に転がり落ちたのは尾崎の首らしく
首元から直接生えた二枚の手のひらで、カサカサと移動している。
僕は面白がって尾崎の首を傘の先で突付いてやった。
すると、突付く場所によって数パターンの音声が再生される仕組みのようで
自由がどうのこうのと喋っていた。
突付く場所によっては、突然かすれ声でシャウトしたりするので
大変スリルがあった。
鳥を万引きした
鳥を万引きした。
頬の赤くマチ針の頭のような真っ黒い瞳をしたオカメインコだった。
ポケットに鳥を入れて、店の出口に差し掛かると
軍人らにこちらへと案内され、帽子を被った大きな鳥の股をくぐらされた。
しかし、センサーは反応せず、鳥の万引き防止システムも大した事無いと思った。
家に帰り、畳に胡坐をかいて、早速万引きした鳥を手に取った。
背中の吹き込み口から息を吹き込むと、鳥はみるみる膨らんで
1メートル近い立派なインコになった。
吹き込み口の下には3つボタンがついており
3種類の色を楽しめるようだったが、僕は白いままのオカメインコでよかった。
取扱説明書によると、クチバシは力を少し入れてひっくり返すと
Oの字のような人間の唇が現れる仕組みになっていた。
空気でパンパンに膨らんで、Oの字口をした赤い頬の物体を
僕は畳の上で抱きかかえて黙っていた。
ダッチワイフだった。
お煎餅
高校の教室でライブをやることになり
ギター片手に教壇の上に立つと
教壇は脆いお煎餅でできていた。
歩くたびにパリッパリッとヒビの入る音がするため
これ以上移動するのは控えた。
上を見ると天井の細いカーテンレールから
赤紫色のカーテンが両サイドへと垂れており
それは根元は分厚く筋張って、裾は葉脈が透けて
まるで紫キャベツだった。
観客はチラホラ見えるだけで、静かだった。
ギターを弾くにあたり、ポケットに手を入れピックを探したが見当たらず
いつの間にか右手に大きく薄っぺらなお煎餅を持っていた。
お煎餅で弾けない事も無いが、と思いつつ、再び観客席に目をやると
教室の隅の柵で囲われた中に一頭の汚いヒツジがおり
柵の出入り口の鍵が開きっぱなしであることに気がついた。
紫キャベツの脇で腕組みをしている学級委員のような男に
身振りでそのことを伝えようとしたが
右手の大きなお煎餅が邪魔なのと
動く度にお煎餅の床が抜けそうなのとで
上手く伝えられず、いつまでも首をかしげる男にイライラとした。
喧嘩祭り
市役所の駐車場は祭りで貸し切られており
中央にはやぐらが組まれ、数え切れない人々に囲まれていた。
寄席太鼓みたいなものが鳴り響き、胸が高鳴った。
やぐらによじ登った僕はそのまま人ごみに飛び込み
体に触れる人々の頭や手のひらをメチャクチャに蹴散らして回った。
中には学校の机と椅子を持ち込み、受験勉強に励む同級生のメガネもいたので
机や椅子を人ごみの中に放り投げた。
自分が、祭りに目が無く喧嘩っ早い男の中の男のように思われたかったからだ。
駐車場のわきに並ぶ屋台は炎上し
次々と自分を止めに入る学校の先生達に、汚い言葉を吐き
人々の上で転がりながら、先生の頭に容赦ないキックを浴びせかけた。
しかし、時折迷子になって泣いている小さな子どもを見つけたときは
子供達の目線まで降りて、彼等の頭をなぜて、心配要らないと笑った。
喧嘩っ早い男の中の男は子どもには優しいと、アピールしたかったからだ。
特に美人が見ている前では進んでこのようなことをした。
ハンカチ落とし
小学校の教室で、同級生達と輪になり昼食を食べていたら
廊下側の擦りガラスの窓から、白塗りのピエロが大騒ぎしながら入ってきた。
ピエロは笑いながら、輪になった僕らの背後を何周か走り回り
そして、先程入ってきた窓から去っていった。
ピエロが苦手な僕は始終目を閉じていたのだが
背後を手で探るとハンカチが落ちていたので
次は僕が何か仮装をして、上級生の教室へ行って
ハンカチ落としの鬼の役をやらなければならなかった。
教室の隅に置かれた木製の掃除道具入れの中から
何か手頃な衣装はないかと探してみると
中身をほじくり出したスイカが落ちていたので
それをかぶり、3階の6年生の教室に向かった。
ピエロがやったのと同じように笑いながら窓から入ると
輪になった上級生らはどよめき、恐がって泣き出す女子もいた。
自分が下級生だとばれてはまずいと思い
なるべく横柄に振る舞い、適当にハンカチを置いて教室を出たが
廊下で自分が下級生の青い名札を着けっぱなしだった事に気づき
愕然とした。
階段を下りると、トイレの入口辺りで
文金高島田で角隠しを被り、白粉で真っ白い顔をした小太りの男が
紅白の着物を着てロボットダンスを踊っており
あまりの恐ろしさに腰が抜けてしまい
四つん這いの状態で教室に戻るや、「幽霊が出た!」と大声で叫んだが
既に授業は始まっており、担任のMCハマーがサングラス越しにこっちを睨んでいた。
商店街
商店街の入口にアーチがあり「絶叫通り」と書かれていた。
アーチをくぐりぬけ、すぐ右側にカウンターバーがあり
ポマードでベタベタの髪をした男がこちらに背を向けて座っていた。
その店は壁が無く、空調も無いので酷く暑そうに見えた。
床には、襟や袖口が垢で汚れたワイシャツが脱ぎ捨ててあり
中央の厨房では中華鍋から炎が上がり、蝉が鳴き喚き
店全体が陽炎で揺らめいている。
近寄って、客たちの話し声に耳を澄ますと
「暑い暑い、ここで唯一涼しげなのは、お前のテクノカットだけだ」
というような内容を話していた。
テロ
桂三枝の操縦するセスナ機に同乗し、空を優雅に旋回中
ちょっとしたことで口論となり、逆上した三枝師匠が
ミサイルのスイッチを押してしまった。
ミサイルは雲を引いて清々しく飛び去り、彼方を通過していたジャンボジェットに命中した。
大爆発を起こし、黒煙を上げて墜落する旅客機を見て
取り返しのつかないことをしてしまったと焦る僕の隣で
師匠は無邪気な顔をして、ミサイルの発射ボタンを連打し
その全てが飛行中の様々な旅客機に命中した。
怖ろしくなり幼稚園時代の友人と民家の陰に隠れていると
早速、旅行会社側からの報復が始まった。
空にはトンボの大群のように飛行機が飛び回り
胡麻塩をぶちまけたように爆弾を撒いているのが見えた。
この胡麻塩が全部これから落ちてくる爆弾だと思うと
途方も無い絶望感に襲われた。
やがて、打ち上げ花火のような音がして
その全ての爆弾は、町の病院や小学校に命中した。
ただ、爆弾と思っていた落下物の殆どは
蛸やイソギンチャクのような比較的軟らかい海産物ばかりだったため
大きな被害が無く一安心した。
爆撃が終わり静かになったところを見計らい
僕達は両手を大きく左右に広げ、低空飛行しながら家に帰った。
田舎の景色は緑色や黄緑色で美しく
友人と別れ、家に帰るということは悲しいことだった。
大蛇
窮屈な檻に入れられて、身動きの取れない真っ白なブルドッグは悲しい目をしていた。
僕は父親からの命令で、このブルドッグを貫通力の無い非力なモデルガンで
射殺するまで撃ち続けなければならなかった。
なるべく早く楽にしてやりたいと思うが、弾丸は彼の肉に浅く食い込み
致命傷を与えられず、僕は涙を流した。
ブルドッグは血液とリンパ液のようなものが混じった桃色の汁を流している。
それを見かねたのか父親は、穴を掘ってブルドッグを埋めるよう命令した。
僕はスコップを手渡され、実家の裏庭を掘り返した。
ふと傍らに立派に生えている松の木の、長く伸びた横枝に目をやると
一匹の大蛇がこちらを向いて鎌首を立てている。
恐くなり、身構えるとそれは物凄い勢いでこちらに向かって飛び掛ってきた。
上手く身をかわしたが、隣では友人が洋式便器に腰掛けて
彼の所属するバンドの愚痴などを聞かせてくるので
興味はあまり無かったが、うん、うん、とうなずき
彼の気が少しでも紛れればと思った。
しかし、なおも大蛇はこちらに向かって飛んでくるのだが
身をかわしたものの、また別の友人といつの間にか始めてしまった
卓球のサーブ権を賭けてジャンケンが始まり
三度襲ってくる大蛇が目に入ったため
彼に、先にサーブをしても良いことを伝え
素早く身をかわしたが、左腕に絡まってしまい
大慌てで大蛇の頭を右手でつまんだものの
ヘビの顎の力は意外に強く、ゆっくりと口を大きく開け
顎を押さえていた右手の人差し指に噛み付きそうだというのに
友人は勝手に卓球の試合を始めてしまい
ピンポン玉は卓球台の上で2度乾いた音を立てて
そのまま床に落ちた。
ヘビの頭を潰してしまいそうに強く握りながら
「球とって、球とって」と無責任に言い続ける友人に
うん、うん、とうなずきながら台の下に落ちたピンポン玉を
左手でまさぐった。
狩り
アフリカの大地を普段着でフラフラ歩いていた。
地平線は低く、視界の殆どが素っ気のない水色の空だった。
ガゼルのような動物が群れになって草を食んでおり
その近くの茂みにはチーターが身を低く構えて、真っ直ぐな瞳でこちらを見ている。
一頭のガゼルが首を伸ばし、肉食動物の気配を察知したかと思うと
チーターが土煙を上げてこちらに向かって走ってくる。
ガゼルの群れは一目散に逃げる。
チーターはぼんやり見ていた僕目掛けて物凄いスピードで走ってくる。
痩せているが無駄のない筋肉に包まれた運動神経のかたまりである。
恐ろしさに腰の抜けた僕は四つん這いになって、逃げていくガゼルのあとを追い
年老いたガゼルか病気のガゼルが、逃げ遅れて身代わりになってくれることを望んだ。
すると、期待通りに群れの中から、汗にまみれ、大地にへたり込む高木ブーが目に入った。
高木ブーはしゃがみこんで首を左右に振り、「もう駄目」とか言っている。
Tシャツは汗でびしょ濡れである。
僕は彼を追い越し、ガゼルの群れまで辿り着き、恐る恐る後ろを振り返ると
チーターはぐったりしている高木ブーの喉元に噛み付いて
首をブンブン振り、クタクタになったブーの短パンからのびる桃色の足が
されるがままに揺れている。
僕は手で首の汗をぬぐいながら、目の前の喫茶店の扉を開けた。
そこはどうやら自分の店で、クーラーがよくきいており涼しい。
僕はお客さんたちに早速高木ブーの話をしたかったのだが
皆、仲本工事の話に夢中だったので、僕は黙って頷きながら
高木ブーのことを切り出すチャンスを伺っていた。
炭鉱
ヘルメットを被った作業員でぎゅうぎゅう詰めのエレベーターに乗り
地中奥深くの炭鉱に向かっている。
エレベーターは、木を組んで作られた簡素なもので
太いロープで吊るされており、壁面からは地下水が垂れている。
何かしら借金を抱えてしまった僕は
毎日これに乗って石炭を掘りに行くのだ。
エレベーターが止まり手動のドアを開けると、乾いた鍾乳洞のような所で
幾つか石の十字架が刺さっている。
今日はここで「超人オリンピック」が開催されるとのことで
トーナメント表によると僕は優勝候補の超人と戦わなければならなかった。
対戦相手はトカゲの頭と太い尻尾を持った真っ黒い超人で
ちびっ子に大人気である。
試合前の控え室に行くと、そこは実家の台所だった。
対戦相手は既に来ており、小さなまぶたを閉じて眠っていた。
彼は眠る時、本物のオオトカゲに姿を変えるらしく
狭い食器棚の中でじっと眠っている。
僕が勝てる見込みもないこのオオトカゲと、もうすぐリングで戦わなければいけない
そう思うとなんだか面倒になってしまい
ポケットに入っていた銃で4、5発、彼の胴体めがけて撃ってしまった。
すると彼は一瞬目を見開き、手足をばたつかせ、そのまま息絶えた。
取り返しのつかないことをしてしまった僕は
ふすまを開け、隣の部屋で寝ていた母を揺り起こし
「お母さん、僕、停学になるかもしれん」
と、うつむいて打ち明けた。
紙舞
中学校の教壇に立ち、何かしら研究発表を行なっていたのだが
教卓の上に置いた書類の束が、どうしても舞い落ちてしまう。
その度に発表を中断し紙を拾い上げ、咳払いをし、話を戻す。
しかし、どうしても書類が落ちてしまい
同じ話ばかりしている。
社会科の授業の一環で、沿岸漁業と沖合漁業、遠洋漁業の違いについて
自分は発表していたはずなのだが
さっきから文鳥やセキセイインコの話ばかりしている気がする。
シドロモドロしながら書類を拾い上げているうちに
両手が散乱した書類でいっぱいになっている。
なおも舞い落ちる紙をしゃがんで拾い集めていると
自分のズボンのチャックが開いていることに気がつく。
しかも、はき潰して破れてしまったパンツから
異様に真っ白で汚れのないペニスがこっそりと顔を出している。
僕は教壇に戻り、さも当たり前であるかのように話を続け
「皆さんご存知のとおり、自分の股間が生まれつきインコであることも云々」
などと難しい顔をして付け加える。
ところが、クラスメイト達は、自分のペニスが出ていることに気づいていなかった様子で
教室がざわめき始め、迂闊な発言をしてしまったことに後悔し
話を戻そうとしても、インコと漁業の関連性がさっぱり分からず咳払いを繰り返す。
城アパート
友人の引っ越したアパートは、築百年以上経過した非常に古い木造建築で
真っ黒い木と真っ白い漆喰の、傾いた七階建ての城だった。
国の重要文化財にも指定されており
抽選で選ばれたものだけが住む事ができるのだという。
最上階の彼の部屋でコーヒーを頂き、テレビを観ていると
隣で友人と知らない女性が猥褻な行為を始めた。
居づらくなった僕は部屋を出て、隣の住人の穴の開いたドアをのぞくと
そこでは小人の女性が丁度着替えをしている最中で
少し気になったが、誰かに見られるのを恐れて階段を下りた。
表札に「童貞御一行様」と札の下がった扉の開いた部屋に入ると
そこでは同級生のさえない男女6人が布団を敷いている。
男子達は勇んで鼻息を荒げ、布団をパタパタと整え
女子達は立ったまま髪などを触って、落ち着かない様子である。
部屋の隅には、ご丁寧にビデオカメラまでセットしてある。
彼等の節操のなさに胸が苦しくなった僕は、窓を開け
赤黒いヘドロの流れるウォータースライダーを
歩いて渡り一番下の階まで下りた。
途中何度も足を滑らせそうになる度に
スライダーの行き着く先に浮かんでいる白骨死体に目が行った。
一番下の階にも大学時代の友人が住んでいた。
紳士的な彼だったが、エロサイトばかり観ている彼のパソコンからは
無数の蛆虫が湧いており、デスクの周辺がヌルついていた。
アパートの全ての部屋は、古く趣のある内装だったので
このような住人に使われるのはもったいない気がした。
住人達のアイデアで、毎週月曜日と金曜日は
城全体にローションをかけるとのことだった。
東京ドライブ
東京へ向かいバイパスを通って北上する途中には一部、ミャンマーがあり
豪華絢爛な寺院や仏像を観た。
以前訪れた時にカメラを忘れ、写真を撮れなかったので
今回こそと思ったが、フィルムが無い事に気づき
一体何のためにミャンマーまでやって来たのかと切なくなった。
東京へ入ると、噂どおり野生化したペットの鳥達であふれていた。
東京に住んでいる人は毎日、巨大なハゲタカやハシビロコウのような
怖ろしい鳥達に脅かされながら生活しているのが見て取れた。
しかし中には、赤や青で、首の二つあるような、綺麗な南国の鳥もいたので
少し羨ましくも思った。
都内のとある骨董屋に辿り着き、中に入ると
なにやら見覚えのある間取りだった。
おそらく僕が以前住んでいた田舎の一軒家と同じで
同じ場所に同じベッドが置かれていた。
僕はベッドで横になり、友人等が骨董品を漁っているのを
何となく眺めていた。
彼等は、ピンクパンサーの毛皮で作られた屏風のような商品を観ていたが
その後ろにある暗い窓の向こうから
顔色の悪いタレントの勝俣州和がこちらを恨めしそうに覗いているのを発見し
大声で「カツマタマタカツが出た!」と叫んだ。
店内は大騒ぎになり、大怪我をした人たちが
出口をもとめて体を引きずり彷徨っていた。
観覧車
外国の観覧車は、小さいが速く回るため、遠心力で今にも飛んでいきそうだった。
ベージュの作業服を着た係員が、必死に観覧車の支柱を抱きかかえて
「誰か助けてください!」と叫んでいる。
僕は友人二人と、慌てて料金を支払い観覧車に乗り込んだ。
3人分の重量で、観覧車が飛んでしまうのを防げると思ったからだ。
ところが、友人らの頭部はアドバルーンのように巨大で
僕の体は箱に収まらず、窓枠にぶら下がる状態でしか乗ることができない。
角度によって時折接近する複雑に組まれた鉄骨を
上手によけながら何とか持ちこたえていた。
地上は石灰で白線を引いたような、人工芝のだだっ広い競技場で
沢山の痩せ細った餓鬼のような生き物が、竹ぼうきで地面をかきむしっている。
少し怖くなり、車内に目を戻すと、友人らは相変わらず巨大な頭部をフラフラさせている。
ふと見ると、友人らのうなじにビーチボールの吹き込み口を見つけたので
キャップを外すと、夏の残り香のようなビニルの匂いの空気が一気に立ち込めた。
彼等の頭を小さくたたんで、ようやく席に座り
その時初めてこの観覧車が木製であることに気がついた。
白ペンキのはげた木製ベンチの手触りが心地よく
これに乗っていれば、何の問題もなく日本に辿り着けるのがウソのようだった。
林家こん平
笑点に参加している僕は、楽太郎の場所に正座して
高く積み上げられた座布団の上から
隣でベッドに横たわり、点滴を垂らしている林家こん平を見下ろしている。
こん平は、点滴の刺さった右腕を弱々しく上げ、「こん平です」と囁いてばかりいる。
彼のオレンジ色の着物の隙間から、枕元へと皮膚に覆われた袋のようなものが繋がっており
どうやらそれは、腫れ上がって肋骨からはみ出してしまった彼の肝臓のようで
ラグビーボールほどもある。
横たわっているこん平の前後を、パタパタと忙しく山田君が座布団を抱えて行き来するのだが
その白い足袋が、いつこん平の肝臓を踏み潰してしまわないかとハラハラして見守っていた。
山田君の着物の裾から時折見え隠れするふくらはぎは
桃色で血走っており、まるで焼きたらこのようであった。
空の飛び方
秋は皆で空を飛んだ。
平泳ぎである程度の高さまで、空を泳いで昇り
そこから風に乗って、体全身を使い舞うのだ。
緑やこげ茶の田畑を下に眺め、神社の石の鳥居にとまると
突然風がやんで、色々なものに置き去りにされたような気がした。
空の飛び方が分からなくなった僕は
下りられない鳥居の上で途方に暮れてしまった。
革靴
ガラスケースの中で飼育されている革靴の産卵を見た。
やはり、靴という動物は殆どの場合双子で生まれてくるとのことだった。
ピンポン玉ほどもない半透明の卵の中には
血走った小さな靴がペアになって行儀よく並んでおり
真っ黒い大きな瞳を動かさないでいた。
ここは靴の研究をしている総合病院の一室のような所で
白衣を着た白髪交じりのヒゲの男性に
僕のカルテと思しき物を見せられた。
どうやら自分は、動物性の靴の履き過ぎで
体の調子を悪くし、彼に診てもらったらしい。
これからはなるべく植物性の草鞋や下駄のようなものを食べなさいと指示された。
彼が言うには、動物性革靴には沢山のホクロがついており
それを食べ過ぎると皮膚癌になるとのことだ。
軽く頭を下げ部屋を出ると、床が酷くべとついており
歩くのに苦労した。
小児科に検診にやってくる幼児らが
舐めかけの飴をそこらかしこに捨てるからだと思った。
雨が降っており、窓ガラスが濡れていた。
塔
数メートルごとに踏み切りのある道路を歩いている。
前方では全く知らないアラブ系のおじさんが、せわしく手招きをしており
僕をどこかへ案内したい様子である。
僕は、点滅し始めた踏み切りのランプの濃い赤に
リンゴ飴を連想し、もう少し見ていたい気分だったが
アラブ人がひどくせかすので彼の後を追った。
すると、バスが停車しており、どうやら僕のことを待っているようだったが
そのバスに乗ってはいけないような気がして
僕は愛想笑いをしながら頭を何度か下げて、傍らの塔に入った。
螺旋階段を駆け上がり、屋上に着くと
ヨーロッパのような赤い屋根の町並みがよく見えた。
その美しい景色をもっと近くで見たいと思い
手すりも金網も無い屋上の端まで、恐る恐る歩み寄ったが
地面が週刊誌の束でできていたので
めくれて落ちてしまわないよう注意が必要だった。